2018年 ブータンレポート part4
2018年 ブータンレポート part4
今野:5日目はJICAにも訪問させていただき、現在の日本の支援などについても伺うことができました。JICAとしては保健事業への支援は現在していないそうですが、医療関係の隊員の派遣はされているそうです。
ブータンでは医療従事者の不足があるようで、医者が約300人、看護師が約1200人で、人口1000人に対して医者0.02人という状況です。まだ国内で医者を養成できる医大がないというのも原因のようですね。
石原:タイやインドなどの近隣の国に留学に行って医師免許を取得すると言っていましたね。
今野:また、まだまだ子どもの感染症は多いようで、新生児死亡率も高いそうです。
併せてUNICEFや保健局も訪問してお話しを伺いましたが、やはり子どもの感染症予防のために、手洗いの徹底などの啓発に力を入れていらっしゃるようでした。
石原:殺生をしてはいけない教えなので、野良犬の数もすごかったですし、農業国なので牛などの家畜も多くいたので、道端にはフンが落ちていることは当たり前でしたね。そういう現実を見ると、感染症予防という点ではまだまだできることがあるように感じました。
今野:最終日は、出発までの間に、JICAで話を伺ったダクツォ職業訓練校を訪問しました。こちらには、青年海外協力隊の方が縫製やデザインなどの技術指導で入られているのですが、障がい者の方向けの職業訓練校で、縫製、機織り、絵画、刺繍など、たくさんの伝統的な技術を習っており、作品の展示や販売もされていました。
見せていただいた作品の出来の良さも印象的でしたが、通っている生徒さんのはじける笑顔と人懐こさが忘れられませんね。
石原:元々予定には入っていなかったのですが、JICAの所長さんから障がい者の子どもたちが通っている職業訓練校があると聞き、絶対に行きたいと思い、訪問させてもらえたので、とても嬉しかったです。
同じような仕事をしているので、国は違っても友情みたいなものを感じましたね。何か今後国を超えて協力できることがあるかもしれないですね。
ブータンではこのような学校はあまりなく、こちらと提携校の2校程度しかないそうです。もっとこういう施設が増えたり、作ったものを販売する場所が増えると良いなと思いました。
今野:支援活動の間に少し観光もさせていただきました。ブータンについてはあまり知らないことも多いので、少しご紹介できればと思います。
まず、食事についてですが、事前に唐辛子を野菜のように使うという情報だけは聞いていましたが、その通りでした。生の唐辛子をチーズソースと炒めたチリチーズは、定番のブータン料理でしたし、その他も基本的に調味料として唐辛子が入ることが多いですね。私はからいもの大好きですが、苦手な石原さんは大変でしたね。
石原:そうですね…使っている食材などは日本と同じようなものばかりでしたので、そこは安心かもしれません。
海が無いので、魚は川魚でしたね。また、私たちが訪れた時は食用のためにも動物を殺してはいけない月間だったので、保存食用の乾燥肉を使った料理が出てきました。
基本的には、野菜を多く使っていました。
そば粉のパンケーキもよく出てきましたね。
あとは、ブータン人はお米が大好きで、おかずより大量のお米を食べていました。
今野:寄宿舎の子どもたちも、みんな山盛りのお米を食べていましたね。お米は日本のようなしっかりとしたお米ではなく、タイ米よりも軽くて、炊いてもサラサラしたお米でした。
お米を炒ったものも、おやつ代わりによく出てきていましたね。
石原:伝統的に、大皿に盛って、それをみんなで囲んで食べるスタイルなので、お店もホテルもビュッフェ形式でしたね。
今野:今回は雨期だったので、雲がかかることが多くて残念ながらヒマラヤ山脈の全体を見ることができませんでしたが、緑豊かな山や、岩山など、いろいろなタイプの山を見ることができました。
田舎の方に行くと、手つかずの自然が多くあり、美味しい空気を堪能できました。
また17世紀頃に建てられた僧院が数多く残っていますし、僧侶の方たちがたくさんいらっしゃいました。
石原:伝統家屋と、昔のブータンの暮らしを知れる博物館も興味深かったですね。
私も空気の綺麗さには驚きました。あまり視力が良くないのに、遠くまで綺麗に見ることができたのは、空気が澄んでいるからなんだと思います。
自然を楽しむのには最高の場所ですね。
あと、ブータンには信号が一つもないのですが、それでも事故はあまり無いというのは驚きましたね。それなりに交通量があるところも、譲り合っていましたし、そういうところも幸せの国の所以でしょうか。
今野:だんだんと見慣れてきましたが、日本でスズメやハトを見るのと同じくらいに牛や犬がいましたね。高速道路の真ん中を堂々と牛が歩いているのは初めて見ました。
石原:子どもたちは、最初は照れているけど人懐こかったし、ブータンの人はみな優しかったですね。夜に歩いても問題なく、治安も良いです。
最後に…
今回ブータンを訪れて、最初は保健も教育も無料で提供されていて、果たして支援が必要なのだろうかと感じることもありましたが、首都から離れると、まだまだインフラも整っていない場所が多く、集落ごとも離れていたり、移動民族がまだ多くいるなど、ワクチンを接種するうえで多くの問題があるということも分かりました。私たちが訪れた首都ティンプーを含む西部地区は、それでもまだ交通網が整備されている方で、東部はもっとインフラの問題があるそうです。
残念ながらアウトリーチサービスを見ることはできませんでしたが、話を伺う限り、車でも行けないところをバイクや、場合によっては徒歩で何時間もかけながらワクチンを届けているとのことです。そうすると、コールドボックスというワクチンを保冷しながら運ぶクーラーボックスもとても大切な役割を担っています。
ワクチン自体の供給だけでなく、そういったコールドチェーンと言われる適切な温度でワクチンを運ぶための資材の支援も引き続き必要なのだと分かりました。
地理的問題や、移動民族や、離れた集落で暮らす人が多いという問題がありながらも、絶対にワクチン接種率を100%にすること、感染症で亡くなる子どもをなくすために、現地のUNICEFや保健局の職員の方々、病院の先生方が奮闘していることも分かりました。
そして、国だけでは賄いきれないワクチンを支援してくださっている、「古着deワクチン」をご利用いただいたみなさまへの感謝の言葉も各地でいただきました。
以前ラオスに行った時もそうでしたが、寄付というのはお金持ちの方がポンと出しているのだろうという意識があり、「古着deワクチン」の仕組みを話し、何万人という方が協力してくださるおかげで寄付させていただいていることをお伝えすると、驚きと共に、そうやってブータンの子どものことを考えてくれることへ、とても感謝されていました。
そして、その貴重な寄付によって贈られたワクチンを無駄にせず、子どもたち全員に届けるべく、これからも頑張っていくとおっしゃっていました。
私も、元気に走り回り、はじける笑顔で近づいてくれる子どもたちと触れ合い、全ての子どもたちの命を守り、この笑顔を守りたいと強く感じました。
これからも、より多くの方に「古着deワクチン」を知っていただき、ワクチンを子どもたちに届けられるように頑張ってまいります。
特定非営利活動法人 燦
福祉作業所 天成舎
石原久子
日本リユースシステム株式会社
エコ得スッキリ・ライフサービス事業部
今野 優子